平成28年度農林水産政策科学研究委託事業に当研究所の提案課題が採択されました
平成28年度農林水産政策科学研究委託事業に当研究所の提案課題が採択されました。
研究テーマは下記の通りになしります。
■研究テーマ
医療分野との連携による農業・農村の活性化とその波及効果及び体系的支援のあり方に関する研究
■課題名
薬用作物の産地形成と園芸療法を通した医学的エビデンスに
もとづく「農村医療観光」の開発による6次産業の創出に関する研究
■研究総括者
学校法人 早稲田大学大学院創造理工学研究科 教授 後藤春彦
■共同研究機関
公立大学法人 奈良県立医科大学
公益社団法人 日本観光振興協会
■研究の背景と目的
超高齢社会の到来を受け、増大する医療費削減の観点から予防医学の意義が再認識されつつあり、「未病を治す」漢方の有用性に大きな注目が集まっている。漢方薬の原料となる薬用作物については、国内で利用されるものの多くを輸入に頼っているが、高品質で安全な生薬の安定的な確保が課題となる中、これまで価格競争力に乏しかった我が国の生薬生産にも再び注目が集まりつつある。
このような中、本研究では、医学的エビデンスに基づく実践的研究を通して、薬用作物を用いた農業・農村の活性化を図るため、薬用作物の産地形成ポテンシャル評価を行うとともに、薬用作物を用いた園芸療法による農村医療観光(Medicine-Based Agritourism、以下、MBATという。)の開発を行う。MBATの開発にあたっては、他地域での実装を可能とする科学的根拠を得ることを目的に農山村に及ぼす経済的効果及び患者に及ぼす医学的効果について専門的視点からの効果測定を行う。さらに、これらの成果に基づき、薬用作物の産地の形成とMBATの実装にむけて、仕組みを体系づけ、公的支援に関する政策を検討する。
■研究の内容
(1) 研究フィールドの設定及び薬用作物の産地形成のポテンシャル評価
奈良県内各地域の物理的・社会的・経済的環境等に関するデータを収集しGISを用いた基本データベースを構築・分析することにより、研究対象地を設定する。各研究対象地における薬用作物の産地形成ポテンシャルを多様な視点から評価・分析し、その手法をマニュアル化するとともに、住民へのヒアリング調査により、生薬に関わる「ヘルス・ナレッジ」、「ヘルス・リテラシー」を抽出し、得られた知見を一般化する。
(2) 薬用作物の園芸療法による農村医療観光(MBAT)の開発
MBATの概念を整理し、農作物及びその副産物の利用を含めた農業・農村の6次産業化や農村活性化の観点から有効な要素を抽出する。また、園芸療法の舞台を耕作地から集落エリアまで拡大したMBATプログラムのプロトタイプを制作し、漢方外来患者を参加者とする実証実験を行う。
(3) 農村医療観光(MBAT)の波及効果測定
(2)と並行して、MBATプログラム参加者及び地域事業者を対象としたアンケート調査・検査等を実施し、経済的効果及び医学的効果を測定し、MBATプログラム制作へ反映する。
(4) 薬用作物の産地の形成と農村医療観光(MBAT)に関する体系的支援
(1)~(3)の研究に基づき、効果的なMBATモデルを構築し、その実装に必要な内容をマニュアル化するとともに、事業の仕組みのあり方及び政策的支援方策を提言する。
■期待される効果
薬用作物の産地形成のポテンシャル評価手法や、経済的・医学的裏付けのあるMBATの実装方法がマニュアル等で整理されることにより、類似の取組が拡大し、6次産業化を含めた国内薬用作物の産地形成及び農山村の活性化に資する。