「分譲団地の居住実態調査」調査報告書をまとめました
早稲田大学医学を基礎とするまちづくり研究所は、日本総合住生活株式会社技術開発研究所との共同研究「団地コミュニティの醸成を通した暮らしの新たな価値創造に関する実践的研究」を実施しております。この調査の一環として2019年度には、首都圏に存する7つの高経年分譲団地を対象に、全戸配布のアンケートを実施しました。この度、その調査報告書を公開いたします。
調査にご協力いただいた皆様へは、改めて御礼を申し上げます。
【調査の背景と目的】
近年我が国では、建物の老朽化、住民の高齢化、コミュニティの衰退など、団地の持続的な暮らしに向けた課題が深刻化している。特に居住者等が管理を担う分譲団地については、合意形成と意思決定が難しいこと、分譲当時の購入者層が一斉に高齢化していくことなどから、早急な対策が求められる。国土交通省では、マンションの適正な管理に向けた調査を重ね、関連する法律の改正や指針提示を進めているが、政策に限らない幅広い対策が望まれている。しかしそのような対策の素地となる、分譲団地居住者の生活実態を把握する調査はこれまでほとんど実施されてこなかった。全国には5000箇所の分譲団地があり、そこには200万戸もの住宅が存在していると言われている(平成25年末時点)。多くは都市郊外部に建設され、生活の拠点となることを通じて都市の成長を支えてきた。こうした分譲団地の今後のあり方を検討することは、我が国の都市のあり方を占う上で大きな意味を持つ。このことから本調査では、居住者の生活実態を可能な限り詳細に明らかにすることを目的とする。具体的にはまず、居住者の基本属性、生活習慣や主観的健康感・孤独感、団地暮らしへの評価等に関する実態を明らかにする。またそれら項目間の関連も明らかにし、主観的健康感・孤独感、団地暮らしへの評価の向上や、団地の持続的な暮らしの実現へ向けた望ましい施策のあり方を提示する。
【主な成果(一部抜粋)】
●地域活動について
コミュニティのイベントの運営意欲がある人は7割近くいるが、「興味のあるイベントがあれば」、「きっかけがあれば」といった条件付きでの希望者や、「参加したい気持ちはあるが参加しにくい」と考える希望者が多い。居住年数の長い人は「興味があるイベントがあれば参加したい」の割合が大きい。一方で短い人は「参加したい気持ちはあるが参加しにくい」の割合が大きい。
団地での仕事意欲がある人は5割いる。「夫婦と子」世帯、75歳未満、就業といった属性を持つ回答者のほうが意欲のある人の割合が大きい。
分譲団地の高齢者は、比較的多く地域活動に参加している傾向にあり、特に男性の参加が目立つ(東京都「平成25年度都民の健康や地域とのつながりに関する意識・活動状況調査」との比較)。
●主観的健康感および孤独感について
主観的健康感の比較的高い人は8割いる。孤独感を感じている人は5割程度いる。
年齢が若い、就業している、世帯年収が高い人のほうが主観的健康感が高い。
単身、50歳未満、居住年数10年未満の人は孤独感が大きい。主観的健康観と異なり就業実態による差はない。
外出や情報技術を活用した情報交換・収集行為が多い住民ほど、主観的健康感が高い傾向にある。また近所付き合いが多い住民ほど、孤独感が小さい傾向にある。